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『僕のフォーカシング=カウンセリング -ひと時の生を言い表す』
池見陽 著 創元社 大学院の集中講義で、日本におけるフォーカシングの第一人者である池見陽先生の講義を受けましたが、とても面白かったです。 フォーカシングとは、臨床心理学における三大潮流のひとつである人間性心理学の中に位置づけられ、ユージン・ジェンドリンによって体系化された技法ですが、今回初めて実際に体験することができました。 人の中に精神の構造があると仮定する「局所論」を提唱し、そしてその精神を対象として分析を行っていこうとする立場をとるフロイトの精神力動論とは対照的に、ジェンドリンはむしろ自己や自我と呼ばれるような概念が生成されてくるこころの過程(「プロセス」)に注目したのだそうです。 池見先生はご著書の中で「こころは分析するのではなく、言い表すことなのだ」と書かれていますが、フォーカシングもまさに、今自分に起こっていることに注目(フォーカス)していきます。 授業中に、池見先生のライブ・セッションも拝見しましたが、そのなんと丁寧なこと。 全身で、フォーカサー(セッションを受ける人)に意識を向け、フォーカサーの体験を共有しようとしていきます。 言語のやりとりはゆっくりと、漂う雰囲気も開放的でリラックスしたものなのですが、その一方で、すさまじいまでの先生の気迫も感じられました。 フォーカシングでは、なんとなく感じているけれども、言葉にするほどには明確になっていない感情や感覚のようなもの―implicit(インプリシット)な側面―を、扱っていきます。 その“感じ”を「フェルトセンス」と呼び、少しずつそれについてぴったりと当てはまる言葉で言語化していくのが、基本的な方法のようです。 そして、その中で「そうだったんだ!」と一種の興奮を感じる体験(体験的一歩)は、フォーカシングでは“フェルトシフト”と呼ばれ、そのフェルトシフトの体験自体が、その人を変化させていくのだということです。 私自身は、フォーカシングが身体感覚を大切にするところにとても興味を持っています。 身体と心を二分しない立場におけるアプローチは東洋的とも思えますが、ジェンドリンは哲学者でもあったようで、フォーカシングのバックグラウンドは思っているよりも奥深そうです。 フォーカシングにしろ、第三世代の認知/行動療法にしろ、近年の心理療法には東洋的なエッセンスが入ってきていて、まさに東西が融合しつつあるように感じられます。 ちなみに、池見先生自身、風貌が少し日本人離れされていて、私には東南アジアの僧侶のような雰囲気が漂っているように感じられました。
by ramram-yoga
| 2014-08-12 18:34
| 本
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